文学・評論
「ツレがうつに…」よりも : イグアナの嫁(本)
2008/5/17 yukkiebeerNo.1レビュアー
「ツレがうつになりまして」と「その後のツレがうつになりまして」を読んだ後に、その二著の間にこの「イグアナの嫁」があることを知りました。ですからこれも「ツレがうつになりまして」シリーズの一冊なのですが、装丁が全く異なるために関連性がないかのように見えます。なぜ幻冬舎はこういう形で本書を出したのだろう、といぶかしく思います。
私は「(その後の)ツレが…」の二著よりも本書のほうが心に残りました。それはおそらくこういう理由からでしょう。「(その後の)ツレが…」のほうは、夫がすでにウツになっていて、そうしたウツの家族とどう生きていくかという視点から描いているため、ウツの家族が身近にいない私にとっては、自分に強く引き寄せながら読むという心構えにどうしてもなれませんでした。しかし「イグアナ」のほうは、かつてはどちらかというとプラス思考で元気ハツラツだったツレがウツ病に苦しんでいく過程を描いています。その過程を読むことで初めて、ウツ病がひょっとしたら私だってかかるかもしれない身近な病でありうるという実感を得たのです。
そしてそのウツの背景に、バブル崩壊以降の日本経済の鬱々とした状況があることがかすかに見えてきます。バブルという先輩たちのソウの時代のつけを後輩のツレが支払わされているようにも見え、心が痛みました。
著者とツレの厳しい現実を、ペットのイグがしれっとみつめてくれている、そんな日々を描いたこのマンガエッセイは、なかなか味のある一冊であるように私には思えたのです。
中東と 世界との距離 : イスラーム哲学の原像 (岩波新書 黄版 119)(本)
2008/5/15 くにたち蟄居日記ベスト32レビュアー
インドネシア勤務となったことで イスラム関係の本を読む必要を覚えた。本書もその一環として手にした。
本書は講演を元にして書かれており 文章は平易だが 中身は流石に容易には理解できない。これは僕が まだ哲学をよむ基礎が出来ていない点と イスラムの素養に欠けているからだと考える次第だ。それでも 二点勉強になった」。
一点目は イスラムの哲学は 欧州の哲学と濃厚な交流を持っていた事だ。僕らから見ると中東と欧州は全く違うと見えるかもしれないが 歴史的に考えると この両者は関係が深いことに気がつく。
実際先日訪問した ヨルダンにはローマの遺跡がはっきりと残っている。また アレクサンドリアの街並みを眺めていると 南欧のそれとの相似に驚いた。
現代はイスラムと西側諸国との対立という「大きな物語」があるが この二つ、特に欧州と中東に通底しているものを踏まえて そんな物語を読み解かないと わからない部分はあるということだと思う。
二点目は著者が イスラム哲学を語るにあたり 「老子」「荘子」などの中国の思想を自由に扱っている事だ。これは中東〜インド〜中国に流れる文化的古層と言えるのかもしれない。
著者は かつて岡倉天心が 同様の問題提起をした点を指摘した上で それを安易に肯定する点には慎重だが 著者の語り口では縦横無尽にそれを踏まえている。
そもそも著者は 大川周明から援助を受けていたことも有名だと聞くが 大川の持っていたインド、中東を含んだ大きなVISIONの一例として 本書があるのかもしれない。
インドネシアというイスラム国に住むことで 今まで手にとる機会がないような本を読む機会を得た。これは人生の醍醐味だ。
本書は講演を元にして書かれており 文章は平易だが 中身は流石に容易には理解できない。これは僕が まだ哲学をよむ基礎が出来ていない点と イスラムの素養に欠けているからだと考える次第だ。それでも 二点勉強になった」。
一点目は イスラムの哲学は 欧州の哲学と濃厚な交流を持っていた事だ。僕らから見ると中東と欧州は全く違うと見えるかもしれないが 歴史的に考えると この両者は関係が深いことに気がつく。
実際先日訪問した ヨルダンにはローマの遺跡がはっきりと残っている。また アレクサンドリアの街並みを眺めていると 南欧のそれとの相似に驚いた。
現代はイスラムと西側諸国との対立という「大きな物語」があるが この二つ、特に欧州と中東に通底しているものを踏まえて そんな物語を読み解かないと わからない部分はあるということだと思う。
二点目は著者が イスラム哲学を語るにあたり 「老子」「荘子」などの中国の思想を自由に扱っている事だ。これは中東〜インド〜中国に流れる文化的古層と言えるのかもしれない。
著者は かつて岡倉天心が 同様の問題提起をした点を指摘した上で それを安易に肯定する点には慎重だが 著者の語り口では縦横無尽にそれを踏まえている。
そもそも著者は 大川周明から援助を受けていたことも有名だと聞くが 大川の持っていたインド、中東を含んだ大きなVISIONの一例として 本書があるのかもしれない。
インドネシアというイスラム国に住むことで 今まで手にとる機会がないような本を読む機会を得た。これは人生の醍醐味だ。
戦前モダン浅草への憧憬に満ちた作品 : 浅草色つき不良少年団(本)
2008/5/14 アジアの息吹ベスト86レビュアー
戦前モダン浅草への憧憬に満ちた作品。
推理モノ仕立てとなってはいるが、
調べつくした当時の風景/風俗、ならびに
酒脱で粋な語り口が表現したかったメインだろう。
生き生きとした設定に比し、
ややキャラクターの動きが活発に感じられない点と
一部設定過多に陥っている箇所もないわけではないが
これだけの取材を基に、現在類書の見当たらぬ作品を
産み出した力量は高く評価できる。
推理モノ仕立てとなってはいるが、
調べつくした当時の風景/風俗、ならびに
酒脱で粋な語り口が表現したかったメインだろう。
生き生きとした設定に比し、
ややキャラクターの動きが活発に感じられない点と
一部設定過多に陥っている箇所もないわけではないが
これだけの取材を基に、現在類書の見当たらぬ作品を
産み出した力量は高く評価できる。
空気に水を差すことの難しさ : 空気と戦争 (文春新書 583)(本)
2008/5/13 3.14カラットのダイアモンドベスト13レビュアー
本書から読み取れるのは、黒を白にしたと言うよりも、数字にほんの少しのさじ加減をした程度のことが重なり、明らかに負けるとわかっていた戦争に突き進んでしまったと言うことである。そのさじ加減をさせたのは「空気」で、さらに「空気」はさじ加減に対しての異議も許さなくなる。
これは現代にも続いている問題で、官僚のみならず、マスコミや学者が出してくるデータにも「空気」の力が働いていると思えるものが少なからずある。そして、空気が読めない人は非難されても賞賛されることがないが、実は「空気に水を差す」ことに比べたら、「空気を読む」ことの方がずっと簡単で楽なのことなのである。
私はずっと、軍国主義者によって戦争が引き起こされたと言う学校教育を受けてきたが、「空気」によって戦争が起こったことや「空気」の恐ろしさ、「空気」に水を差す方法などを教えている学校はあるのだろうか?
これは現代にも続いている問題で、官僚のみならず、マスコミや学者が出してくるデータにも「空気」の力が働いていると思えるものが少なからずある。そして、空気が読めない人は非難されても賞賛されることがないが、実は「空気に水を差す」ことに比べたら、「空気を読む」ことの方がずっと簡単で楽なのことなのである。
私はずっと、軍国主義者によって戦争が引き起こされたと言う学校教育を受けてきたが、「空気」によって戦争が起こったことや「空気」の恐ろしさ、「空気」に水を差す方法などを教えている学校はあるのだろうか?
音のない世界が炙り出す、話し言葉と書き言葉の差異 : 静かな爆弾(本)
2008/5/11 盥アットマークベスト63レビュアー
話し言葉っていうものは甘えや傲慢さを含んでいるものなのだと、この小説は教えてくれる。話し言葉には書き言葉にはないニュアンス、情報量が含まれていている。その“ニュアンス”を含めることが出来ない書き言葉であるメールの文章は、時に誤読を生む(顔文字はニュアンスを補完するための苦肉の策だ)。この小説の主人公の彼女、響子はしゃべることが出来ない(それにしても、この“響”という言葉は小説のテーマを象徴している)。主人公は、話し言葉、声、音といった情報が当たり前に存在する世界に暮らしていて、音のない世界に住む響子とのディスコミュニケーションに戸惑い、驚き、恐れを覚える。そして、響子と出会う前の日常が、いかにニュアンスに甘えたものであるのかを知る。まぁ、この小説の面白さは、話し言葉−書き言葉=ニュアンスあるいはノイズっていうものが、いかに豊かな情報であり、それを書き言葉、言語、文学に盛り込むことがどれだけ困難な作業であるかってことを、炙り出した点にあるんだと思うけど。ホットな話し言葉とクールな書き言葉は、まったく別のツールである、っていう。
それともうひとつ、響子が野良猫にハムを与える行為を、主人公は最初「偽善的」って捉えるんだけど、響子自身は「もしかしたらこの猫、神様かもしれない」って捉えている、そのコンテクストの差異。主人公はそれを「施してやる」「施させてもらう」って言葉に整理しているんだけど、これもニュアンスに頼って一方的に押し付けるのか、逆に少ない情報量からいかに相手の感情、表情を読み取るのかっていう、Push的なコミュニケーションとPull的なコミュニケーションの考え方の対置、相違を示しているんじゃないかな。
主人公は響子の世界を徐々に理解していくんだけど、小説の後半、仕事で自分しか見えなくなった主人公に甘えと傲慢さが芽生え、響子という存在を失ってしまう。結末はお楽しみだ。
それともうひとつ、響子が野良猫にハムを与える行為を、主人公は最初「偽善的」って捉えるんだけど、響子自身は「もしかしたらこの猫、神様かもしれない」って捉えている、そのコンテクストの差異。主人公はそれを「施してやる」「施させてもらう」って言葉に整理しているんだけど、これもニュアンスに頼って一方的に押し付けるのか、逆に少ない情報量からいかに相手の感情、表情を読み取るのかっていう、Push的なコミュニケーションとPull的なコミュニケーションの考え方の対置、相違を示しているんじゃないかな。
主人公は響子の世界を徐々に理解していくんだけど、小説の後半、仕事で自分しか見えなくなった主人公に甘えと傲慢さが芽生え、響子という存在を失ってしまう。結末はお楽しみだ。
教育者としてのありかた : 次郎物語〈上〉 (新潮文庫)(本)
2008/5/11 くにたち蟄居日記ベスト32レビュアー
なんとなく言うのが恥ずかしい気もするが 次郎物語は僕の愛読書である。
なんで恥ずかしいのかを自答しているが やはり ストレートなまでの素直な本だからかと思う。
例えば 僕は 芥川龍之介という作家の著作も非常に好きだ。これは言っていて恥ずかしくない。芥川という稀代の芸術家の作品を讃することには問題がないのだと思う。
その点 下村湖人という方は「芸術家」とは言い難いものがある。むしろ「教育者」の資質がきわめて強いと思うのだ。
僕は芥川の作品を読んで 何かを学ぶということは出来ない。彼の著作が好きだとしたら それは 圧倒的な「美」がそこにあるからだと思っている。実際 芥川の作品のいくつかは まるで工芸品のような美しさを持っている。壊れやすいガラス細工のような。
それと比較すると「次郎物語」には かような美は見いだせない。但し 行間から聞こえてくる著者の「教え」には 中年になった今でも学ぶ点が多い。
いい年をして「勉強」していることが恥ずかしいのだろうか?
なんで恥ずかしいのかを自答しているが やはり ストレートなまでの素直な本だからかと思う。
例えば 僕は 芥川龍之介という作家の著作も非常に好きだ。これは言っていて恥ずかしくない。芥川という稀代の芸術家の作品を讃することには問題がないのだと思う。
その点 下村湖人という方は「芸術家」とは言い難いものがある。むしろ「教育者」の資質がきわめて強いと思うのだ。
僕は芥川の作品を読んで 何かを学ぶということは出来ない。彼の著作が好きだとしたら それは 圧倒的な「美」がそこにあるからだと思っている。実際 芥川の作品のいくつかは まるで工芸品のような美しさを持っている。壊れやすいガラス細工のような。
それと比較すると「次郎物語」には かような美は見いだせない。但し 行間から聞こえてくる著者の「教え」には 中年になった今でも学ぶ点が多い。
いい年をして「勉強」していることが恥ずかしいのだろうか?
最初に読んでみました : 能の物語 (講談社文芸文庫)(本)
2008/5/8 recluseベスト66レビュアー
この年になりやっと能なるものを実際に見ることになりました。見た後に読んだのがこの作品でした。この作品は能の有名な名作を丁寧に解説しています。大部分は平家物語に関連の深い作品ですが、やはりここにこそ日本人の美意識の極致が凝縮されているからでしょうか。能自体は謡いの部分は音で聞いてもなかなか言葉を明確に把握することは難しいようです。視覚と想像力の自由な飛翔こそが能の理解には不可欠だと著者は指摘しますが、やはり、この作品を読んでそのエッセンスを前もって吸収しておくことが、その作業には必要でしょう。それぞれの作品について、実際の地名と登場人物、そして故事と歌の解説そして作品の本質が見事にまとめられています。間と省略がその本質である能の魅力が見事にまとめられた作品です。選ばれたどの作品も日本人の美意識の本質を読者に突きつけるものです。
きたー。おぼれました。 : 火星の長城 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-3 レヴェレーション・スペース 1) (ハヤカワ文庫 SF レ 4-3 レヴェレーション・スペース 1)(本)

火星の長城 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-3 レヴェレーション・スペース 1) (ハヤカワ文庫 SF レ 4-3 レヴェレーション・スペース 1)(本)
アレステア・レナルズ,
発売日:2007/08/25
2008/5/7 lemonerikaベスト10レビュアー
5つの中・短篇からなるハードっぽいSFです。
脳に機械を埋め込んだ人々と人類の争いの初期を描いたもの、
太陽系外で、人々が出会う殺人事件を描いたもの、
木星の衛星を舞台にスパイを活躍を描いたもの
謎の惑星の謎の建築物を冒険するもの
等です。
戦争や外交を描いたもの、ミステリーっぽい作品、
スパイもの、探検もの・・・
どの話も、趣向が違って飽きません。
人類の進歩、技術の進歩、異星人たち・・・
筆者の描く「宇宙」に溺れました。
一つ読むと次の話が楽しみになり、一気に読みました。
解説もGOOD。作品の背景や、他の作品との関係、
各物語の歴史的な位置づけ等が丁寧に説明されています。
満足しました。
脳に機械を埋め込んだ人々と人類の争いの初期を描いたもの、
太陽系外で、人々が出会う殺人事件を描いたもの、
木星の衛星を舞台にスパイを活躍を描いたもの
謎の惑星の謎の建築物を冒険するもの
等です。
戦争や外交を描いたもの、ミステリーっぽい作品、
スパイもの、探検もの・・・
どの話も、趣向が違って飽きません。
人類の進歩、技術の進歩、異星人たち・・・
筆者の描く「宇宙」に溺れました。
一つ読むと次の話が楽しみになり、一気に読みました。
解説もGOOD。作品の背景や、他の作品との関係、
各物語の歴史的な位置づけ等が丁寧に説明されています。
満足しました。
欧米以上に感じる中国とのギャップ : 逆検定中国歴史教科書―中国人に教えてあげたい本当の中国史 (祥伝社黄金文庫 (Gい2-11))(本)
2008/5/6 3.14カラットのダイアモンドベスト13レビュアー
長野で行われた北京オリンピック聖火リレーで中国人達がとった行動を見てもわかる通り、日本人と中国人の違いは、日本人と欧米人との違いよりもはるかに大きいと思われる。本書を読むと、中国人が日本人のみならず欧米人ともかなり違った歴史観の中で生きていると言うことが理解でき、それが長野での行動に繋がっているのかと妙に納得してしまった次第である。異文化を知る時、日本文化とのギャップが大きければ大きいほど知的興味がかき立てられるが、それを求めている人にとって、本書はうってつけである。
子どものころ読んだグリム童話を別の角度から見るススメ : グリム童話―メルヘンの深層 (講談社現代新書)(本)
2008/5/4 くろやぎベスト93レビュアー
本書の圧巻はグリム兄弟のウソをあばく第3章です。
グリム兄弟は、庶民の代表のような農家のおばあさんから話を聞いたことになってまいます。また、聞いた話の内容を変えていないことになってます。
ところが、グリム童話が出版された直後から、「グリム兄弟は農村を訪ねてまわったりしなかった」との批判が出ていました。
後の研究で明らかになったグリム兄弟の取材先は、中産階級で(農家ではない)、若い女性で(老婦ではない)、教養ある女性で(本で読んだ内容を含むかもしれない)、フランス系ドイツ人でした。
これでは、ドイツ庶民が口承で伝えた話を集めたことになりません。
もうひとつ、「話の内容を変えていない」がウソであることは、草稿から第7版までの内容を比べれば、おのずから明らかになることです。
何より、話の長さが、ほぼ倍になっています。鈴木氏が例としてあげた「カエルの王様」は、草稿で3行だったのに、初版で6行に増え、第2版で7行になり、決定版では11行に達しました。
さて、グリムのウソをあばいた鈴木氏は、グリムを糾弾するかわりに、グリム童話をもっと楽しむことを提案しています。
「古代から伝えられた物語」ではなく、「19世紀ドイツの価値観で書き換えられた物語」という目で見てみると、この物語に込められた“陰謀”が見えてくる。それを楽しみましょう、というのです。
別な角度から見ることによって、子どものころ読んだグリム童話の持つ意味が違って見えてくるのは楽しい。
グリム兄弟は、庶民の代表のような農家のおばあさんから話を聞いたことになってまいます。また、聞いた話の内容を変えていないことになってます。
ところが、グリム童話が出版された直後から、「グリム兄弟は農村を訪ねてまわったりしなかった」との批判が出ていました。
後の研究で明らかになったグリム兄弟の取材先は、中産階級で(農家ではない)、若い女性で(老婦ではない)、教養ある女性で(本で読んだ内容を含むかもしれない)、フランス系ドイツ人でした。
これでは、ドイツ庶民が口承で伝えた話を集めたことになりません。
もうひとつ、「話の内容を変えていない」がウソであることは、草稿から第7版までの内容を比べれば、おのずから明らかになることです。
何より、話の長さが、ほぼ倍になっています。鈴木氏が例としてあげた「カエルの王様」は、草稿で3行だったのに、初版で6行に増え、第2版で7行になり、決定版では11行に達しました。
さて、グリムのウソをあばいた鈴木氏は、グリムを糾弾するかわりに、グリム童話をもっと楽しむことを提案しています。
「古代から伝えられた物語」ではなく、「19世紀ドイツの価値観で書き換えられた物語」という目で見てみると、この物語に込められた“陰謀”が見えてくる。それを楽しみましょう、というのです。
別な角度から見ることによって、子どものころ読んだグリム童話の持つ意味が違って見えてくるのは楽しい。
what is already done cannot be undone......... : 陰翳礼讃 (中公文庫)(本)
2008/5/4 recluseベスト66レビュアー
たくさんレヴューがでているんですね。いまさら何も付け加えるものはありません。まず読みやすい。身近な話題(厠、旅行、男女関係、そして女性)が著者によって一刀両断に批評されていきます。小説と違って、ここには彼の美意識が具体性を持つ現象や道具へのコメントを通じて、直接に提示されているわけです。特に女性観の部分は一読に値します。しかし、この部分は、おそらく誤解されやすい部分です。現代では、もはや断片的にこの種のコメントをこのような形で述べることは許されないかもしれません。特に、「個性」ではなく「型」を重視する部分、そして日本女性を人形と捉えた部分(47ページ、125ページ)は、もはや現代の日本人には少なからぬ反感を引き起こす部分なのかもしれません。またステレオタイプ化した国民性の過度の一般化とそれへの依拠は議論を巻き起こす部分でしょう。しかし断片に現れる見解を、その基底の部分で支えているのは、著者の日本に対する美意識です。悲しいかな、この美意識を、谷崎が取り上げる具体性の中で再体験することは難しいかもしれません。やっと知的営為の産物として、かすかに思い出すことができるといったところでしょう。この全体的な哲学への理解なしで、これらの断片への好悪やその古めかしさを取り上げても、それは野暮な行為というべきでしょう。ここでは、これまでは不思議としか思えなかった鉄漿すら必然として説明されているくらいですから。そして、忘れてはならないのは、全編、著者のユーモアがさりげなくちりばめられています。
今そこにいる相手じゃなく、自分勝手に想像した相手との恋愛 : 星へ落ちる(本)
2008/5/4 盥アットマークベスト63レビュアー
恋愛というか、自己存在の証を得るっていうのは難儀で切ないものだなぁ。結局、恋愛って、相手が愛しいんじゃなくって、相手を思う自分が愛しいっていうか、他者を通してしか自分を愛でられない、自己を確認できないってのが狂おしく、歯痒い訳でさ。
で、相手との関係性なんだけど、この連作短編というか一篇の中篇小説を読んでいると、対等な恋愛関係なんてまずありえないってことがわかる。あえて主従関係の“従”を選び取るような恋愛すらある。逆説的だけど対等の関係ってのは、常に丁々発止のやり取り、ぶつかり合いが必要で、不安定で脆いものなのだ。それよりも、安定した関係を最優先するなら、自らを殺し、一切合財、相手に従属した関係に成りきってしまったほうがフィックスする。もちろん生身の感情がスポイルされるから多大なストレスを溜め込むことになる訳だけど。「前の街は、道行く人々も街並みも何かの皮を被っているような感じがして、偽物的であったけれどその統一されて落ち着いた空気がむしろ心地良かった。この街では、人々も街並みもどこか剥き出しな感じがして、気をつけていないとすぐに生な、臭いものが目に入ってしまいそうだった」。この文章なんかそういう2方向の恋愛関係のメタファーとして書かれている。
邪険にして追い縋られ、疎ましく思っている元カレに対して、なぜ最後通告として「他に好きな人が出来たから」っていう言葉が言えないのか。それも結局、人の狡さ、弱さから来る計算だよね。その、他の好きな人との新たな関係性も、脆く、移ろいやすい関係な訳でさ。
さらには安定したと思った瞬間から不安定な方向に転がり始める厄介さ。「彼と暮らし始めた途端、私は彼から遠く離れてしまったような気持ちになった」。人って、今そこにいる相手じゃなく、過去の、あるいは遠くの、自分勝手に想像した相手と常に恋愛しているってことなんだろうね。辛いなぁ…
で、相手との関係性なんだけど、この連作短編というか一篇の中篇小説を読んでいると、対等な恋愛関係なんてまずありえないってことがわかる。あえて主従関係の“従”を選び取るような恋愛すらある。逆説的だけど対等の関係ってのは、常に丁々発止のやり取り、ぶつかり合いが必要で、不安定で脆いものなのだ。それよりも、安定した関係を最優先するなら、自らを殺し、一切合財、相手に従属した関係に成りきってしまったほうがフィックスする。もちろん生身の感情がスポイルされるから多大なストレスを溜め込むことになる訳だけど。「前の街は、道行く人々も街並みも何かの皮を被っているような感じがして、偽物的であったけれどその統一されて落ち着いた空気がむしろ心地良かった。この街では、人々も街並みもどこか剥き出しな感じがして、気をつけていないとすぐに生な、臭いものが目に入ってしまいそうだった」。この文章なんかそういう2方向の恋愛関係のメタファーとして書かれている。
邪険にして追い縋られ、疎ましく思っている元カレに対して、なぜ最後通告として「他に好きな人が出来たから」っていう言葉が言えないのか。それも結局、人の狡さ、弱さから来る計算だよね。その、他の好きな人との新たな関係性も、脆く、移ろいやすい関係な訳でさ。
さらには安定したと思った瞬間から不安定な方向に転がり始める厄介さ。「彼と暮らし始めた途端、私は彼から遠く離れてしまったような気持ちになった」。人って、今そこにいる相手じゃなく、過去の、あるいは遠くの、自分勝手に想像した相手と常に恋愛しているってことなんだろうね。辛いなぁ…
退屈しているヒマなど、僕には一生ないと思う : 顔―Faces(本)
2008/5/3 くろやぎベスト93レビュアー
バイオリニスト葉加瀬太郎が30歳の時に書いた「秘密の芸術メモ」です。
本書のカバー見返しに載っている10年前の葉加瀬さんの写真を見ると、今の葉加瀬さんとは180度印象が違います。音楽家として活躍していて、今より相当とんがっていたようです。
そんな葉加瀬さんのバイオリニストとしての顔、作曲家の顔、画家としての顔、ひょっとしたらシェフになっていたかもしれないというほど料理好きの顔を見せてくれるのが本書です。
冒頭で葉加瀬さんは「男が必死で何かに取り組むときの動機というのは、(中略)女の子にモテたかったから」と、自分の情熱の源を明かしています。バイオリンを習いはじめたのも、うまくなりたいと思ったきっかけも、同級生の女の子がバイオリン教室に通っていたからです。
コンクールで西日本の2位になったことから、ますますやる気になり、葉加瀬少年は芸大を目指す若者が集まる堀川高校に入りました。音楽漬けの毎日がはじまり、芸大に入ってからもオーケストラを掛け持ちして演奏し続けました。
充実した生活が一段落した頃、葉加瀬青年は作曲やバンドにはまり、普通の芸大卒業生と違う道を歩きはじめます。
自分の歩んだ道を振り返りながら発する葉加瀬さんの言葉は、自信と教訓に満ちています。
たとえば、次のような言葉です。
「好きなことをやっていられるのは、むしろアマチュアだ」
「創意工夫のネタは、まわりにいくらでも転がっている」
「退屈しているヒマなど、僕には一生ないと思う」
「自分のなかにある『表現したいもの』が根っこの部分に
なければ、表現する資格がない」
「自分を感動させることができないような人間には、
人を感動させる芸術など作れるはずがない」
今は3枚目でテレビに登場することの多い葉加瀬さんが、本当はすごい芸術家だったことが納得できる一冊でした。
本書のカバー見返しに載っている10年前の葉加瀬さんの写真を見ると、今の葉加瀬さんとは180度印象が違います。音楽家として活躍していて、今より相当とんがっていたようです。
そんな葉加瀬さんのバイオリニストとしての顔、作曲家の顔、画家としての顔、ひょっとしたらシェフになっていたかもしれないというほど料理好きの顔を見せてくれるのが本書です。
冒頭で葉加瀬さんは「男が必死で何かに取り組むときの動機というのは、(中略)女の子にモテたかったから」と、自分の情熱の源を明かしています。バイオリンを習いはじめたのも、うまくなりたいと思ったきっかけも、同級生の女の子がバイオリン教室に通っていたからです。
コンクールで西日本の2位になったことから、ますますやる気になり、葉加瀬少年は芸大を目指す若者が集まる堀川高校に入りました。音楽漬けの毎日がはじまり、芸大に入ってからもオーケストラを掛け持ちして演奏し続けました。
充実した生活が一段落した頃、葉加瀬青年は作曲やバンドにはまり、普通の芸大卒業生と違う道を歩きはじめます。
自分の歩んだ道を振り返りながら発する葉加瀬さんの言葉は、自信と教訓に満ちています。
たとえば、次のような言葉です。
「好きなことをやっていられるのは、むしろアマチュアだ」
「創意工夫のネタは、まわりにいくらでも転がっている」
「退屈しているヒマなど、僕には一生ないと思う」
「自分のなかにある『表現したいもの』が根っこの部分に
なければ、表現する資格がない」
「自分を感動させることができないような人間には、
人を感動させる芸術など作れるはずがない」
今は3枚目でテレビに登場することの多い葉加瀬さんが、本当はすごい芸術家だったことが納得できる一冊でした。
女の子へのほのかな憧れ、カルピスのあまずっぱさを思い出す : カッパのかーやん (新日本おはなしの本だな)(本)
2008/5/3 くろやぎベスト93レビュアー
夏休みも後半に入ったある日、小学校4年生の祐太は、近所のビルの建設現場に幽霊が出るというウワサを耳にしました。
ビルの建設現場には、以前ひょうたん池という小さな池があり、子どもたちの遊び場でした。埋め立てのおかげでサカナ釣りもできなくなってしまった祐太とケンは、ひょうたん池の遊びおさめとして、幽霊探しに出かけることにします。
夜中にビルの建設現場に忍びこみ、幽霊がいるらしいという穴の底に降りていってみると、「ヒイーィ、イィーイ……」という、泣き声ともなんともつかない気味悪い声が聞こえてきました。
逃げだそうとした二人に、こんどは「タスケテ……」というかすかな声が聞こえ、声のする場所に恐る恐る懐中電灯を近づけてみると、なんと! カッパが助けを求めていることが分かりました。
掘り起こして助け出し、話を聞いてみたところ、このカッパ名前を「かーやん」と言い、ひょうたん池に先祖代々、何万年も住みついてきました。
ところがこの春、冬眠からさめて外に出ようとしたら、掘っても掘っても土ばかりで、ちっとも上に進めません。まわりに水気は少ないし、冬眠後で体力もないし、動けなくなっていたところに祐太たちがやってきたのです。
「かーやん」を家に連れて帰った祐太は、仲良しのケンと、憧れの女の子涼香といっしょに、水がたくさん流れている田舎の川に「かーやん」を連れていってあげることにしました。
大人に見つからずに「かーやん」を田舎に連れていくにはどうしたらいいのか。
祐太が考えついたのは……。
「かーやん」を自然界に戻してあげることを縦軸にした、ひと夏の冒険の物語です。
「かーやん」の落ち着き先も心配だけど、涼香ちゃんといっしょに過ごせることの方がうれしい。
そんな祐太のウキウキした心も伝わってきます。
ビルの建設現場には、以前ひょうたん池という小さな池があり、子どもたちの遊び場でした。埋め立てのおかげでサカナ釣りもできなくなってしまった祐太とケンは、ひょうたん池の遊びおさめとして、幽霊探しに出かけることにします。
夜中にビルの建設現場に忍びこみ、幽霊がいるらしいという穴の底に降りていってみると、「ヒイーィ、イィーイ……」という、泣き声ともなんともつかない気味悪い声が聞こえてきました。
逃げだそうとした二人に、こんどは「タスケテ……」というかすかな声が聞こえ、声のする場所に恐る恐る懐中電灯を近づけてみると、なんと! カッパが助けを求めていることが分かりました。
掘り起こして助け出し、話を聞いてみたところ、このカッパ名前を「かーやん」と言い、ひょうたん池に先祖代々、何万年も住みついてきました。
ところがこの春、冬眠からさめて外に出ようとしたら、掘っても掘っても土ばかりで、ちっとも上に進めません。まわりに水気は少ないし、冬眠後で体力もないし、動けなくなっていたところに祐太たちがやってきたのです。
「かーやん」を家に連れて帰った祐太は、仲良しのケンと、憧れの女の子涼香といっしょに、水がたくさん流れている田舎の川に「かーやん」を連れていってあげることにしました。
大人に見つからずに「かーやん」を田舎に連れていくにはどうしたらいいのか。
祐太が考えついたのは……。
「かーやん」を自然界に戻してあげることを縦軸にした、ひと夏の冒険の物語です。
「かーやん」の落ち着き先も心配だけど、涼香ちゃんといっしょに過ごせることの方がうれしい。
そんな祐太のウキウキした心も伝わってきます。
600ページにも及ぶハードな前編だが、読み応えあり。 : 弥勒世(みるくゆー) 上(本)
2008/5/3 hide-bonベスト65レビュアー
上下2巻に及ぶ長編小説を読む時、些か二の足を踏んでしまう。それは、ごく少数の幸福な出会いを除いて、やはり読了するまでの長い道行が頭をよぎるのと、仮につまらなかった際、既に後編を購入する為費やしてしまった金銭、あるいは、購入せずとも物語の結末を知る事なく小説に関わってしまった労力の無為について考えてしまうからだ。で、今作はどうか。馳星周の作品は、「不夜城」を始め、かって面白く読んだが最近の作品には今一歩乗れず。600ページを超える長編と言う事もあり、取りあえず、前編のみを購入してみた。
奄美大島から一旗揚げようと琉球の地に渡った男、大和(日本)からも沖縄からも差別され、望みはアメリカの市民権のみと言い放ち、どんな汚い仕事でもする。やまとーんちゅ、アメリカー、うちなーんちゅに対する憎悪を持ち、搾取される側からする側に立つとの確信的な思いを持つ主人公。ベトナム戦争、米軍基地、反戦運動、本土復帰、利権と革命、リベラルな本国左翼勢力の権威主義、コンプレックス、憤怒、鬱屈感、様々な思惑が絡み合い、騒乱を誘発する様なねっとりとした熱波、暴力的で猥雑なムードが充満する濃厚でピカレスクな1冊。
60年代末の「沖縄」を照射した社会的な意味合いも感じるが、革新勢力の欺瞞を哂い、決して情動に流されない主人公の心の奥底にあるニヒリズムに煽られる。
筆者の「沖縄」への思いと、露悪的な主人公の生きザマを確認すべく、後編の購入を決めた。
奄美大島から一旗揚げようと琉球の地に渡った男、大和(日本)からも沖縄からも差別され、望みはアメリカの市民権のみと言い放ち、どんな汚い仕事でもする。やまとーんちゅ、アメリカー、うちなーんちゅに対する憎悪を持ち、搾取される側からする側に立つとの確信的な思いを持つ主人公。ベトナム戦争、米軍基地、反戦運動、本土復帰、利権と革命、リベラルな本国左翼勢力の権威主義、コンプレックス、憤怒、鬱屈感、様々な思惑が絡み合い、騒乱を誘発する様なねっとりとした熱波、暴力的で猥雑なムードが充満する濃厚でピカレスクな1冊。
60年代末の「沖縄」を照射した社会的な意味合いも感じるが、革新勢力の欺瞞を哂い、決して情動に流されない主人公の心の奥底にあるニヒリズムに煽られる。
筆者の「沖縄」への思いと、露悪的な主人公の生きザマを確認すべく、後編の購入を決めた。
自堕落な生活と妄想癖が「芸」の領域に突入 : 生きていてもいいかしら日記(本)
2008/5/2 くろやぎベスト93レビュアー
1つ3ページの小話を集めたエッセー集です。
読み始めて3ページで、「ん?」と思いました。
6ページ読んだところで「クスリ」とし、12ページで大笑い。
20ページ読んだあたりで、この人の文章力に脱帽しました。
これはいい人を見つけた!
著者は40代独身女性で、札幌市内で親と同居。
好きなもの、昼酒。
座右の銘は「好奇心は身を滅ぼす」。
職業はライターという一種のプータローで、ときどき引きこもりしては社会復帰を繰り返すというトホホな生活を送っています。
いいとこなしのキミコさんの日常は、とくに大きな事件は起こりませんが、なぜか笑えるネタが転がっています。
昼間の回転寿司で楽しくビールを飲んでいたら、となりに座ったじいさんに説教された、とか、
トイレ掃除をしていて、うっかりボタンに触ってシャワートイレの水を頭からかぶってしまった、とか
2年も会っていない友人から涙ながらに「話があるから来て」と電話を受け、行ってみたら30万円もする鍋を売りつけられそうになった、等々。
「何もない一週間だった」という書き出しではじまっても、本屋のトイレの前で大学生くらいの女の子が「私、妊娠したかも」と涙ながらに男の子に告白している場面に出会ったりします。
一瞬で状況を理解したキミコさんは、三角関係の女の子がもうすぐ現れるにちがいない、と想像力をはたらかせました。立ち読みしながら三角関係の女の子を待っても、だれも現れないのですが、待っているあいだに、このあとの二人の修羅場の様子にまたもや想像の翼を広げます。
キミコさんのこの妄想癖は、自堕落な生活の様子と共に、一種の「芸」の領域に突入しています。たとえて言うなら、ちびまる子ちゃんがそのまま大人になったようなものでしょうか。
『サンデー毎日』の連載エッセー。大人気だそうです。
私からも、超お勧め!!
読み始めて3ページで、「ん?」と思いました。
6ページ読んだところで「クスリ」とし、12ページで大笑い。
20ページ読んだあたりで、この人の文章力に脱帽しました。
これはいい人を見つけた!
著者は40代独身女性で、札幌市内で親と同居。
好きなもの、昼酒。
座右の銘は「好奇心は身を滅ぼす」。
職業はライターという一種のプータローで、ときどき引きこもりしては社会復帰を繰り返すというトホホな生活を送っています。
いいとこなしのキミコさんの日常は、とくに大きな事件は起こりませんが、なぜか笑えるネタが転がっています。
昼間の回転寿司で楽しくビールを飲んでいたら、となりに座ったじいさんに説教された、とか、
トイレ掃除をしていて、うっかりボタンに触ってシャワートイレの水を頭からかぶってしまった、とか
2年も会っていない友人から涙ながらに「話があるから来て」と電話を受け、行ってみたら30万円もする鍋を売りつけられそうになった、等々。
「何もない一週間だった」という書き出しではじまっても、本屋のトイレの前で大学生くらいの女の子が「私、妊娠したかも」と涙ながらに男の子に告白している場面に出会ったりします。
一瞬で状況を理解したキミコさんは、三角関係の女の子がもうすぐ現れるにちがいない、と想像力をはたらかせました。立ち読みしながら三角関係の女の子を待っても、だれも現れないのですが、待っているあいだに、このあとの二人の修羅場の様子にまたもや想像の翼を広げます。
キミコさんのこの妄想癖は、自堕落な生活の様子と共に、一種の「芸」の領域に突入しています。たとえて言うなら、ちびまる子ちゃんがそのまま大人になったようなものでしょうか。
『サンデー毎日』の連載エッセー。大人気だそうです。
私からも、超お勧め!!
パラダイスで起きる連続殺人事件 : 影に潜む(ハヤカワ・ミステリ文庫) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 1-44 ジェッシイ・ストーン・シリーズ)(本)
2008/5/2 鈴木純一ベスト27レビュアー
ボストン郊外の小さな街パラダイスで起きる連続殺人事件。地元パラダイス警察
の署長ジェシイ・ストーンは毎日メディアからのプレッシャーを受けながら捜査
することに。そして、ただでさえ少ない署員なのに、高校生のレイプ事件が起き
て、パラダイス警察はてんやわんやに。署員のモリーとジェシイの関係/会話は
ウィットに富み、ユーモアがいっぱいで楽しい。そのモリーもこれまでは、署内
の事務を切りもりする、ジェシイのよき理解者という感じだったのが、今回は捜
査(レイプ事件の方)に加わる点も面白い。連続殺人事件の方は、途中から誰が
犯人か読者には分かるようになり、ジェシイもそれを確信しつつ犯人との心理戦
へ。スペンサーシリーズでおなじみの州警察のヒーリーが出てくるのはいつも通
り。それに加えてリタ・フィオーレが出てくるのは楽しめた。ストーリーの展
開、登場人物の魅力、事件の解決と顛末、どれをとってもストーンシリーズで一
番楽しめた。
の署長ジェシイ・ストーンは毎日メディアからのプレッシャーを受けながら捜査
することに。そして、ただでさえ少ない署員なのに、高校生のレイプ事件が起き
て、パラダイス警察はてんやわんやに。署員のモリーとジェシイの関係/会話は
ウィットに富み、ユーモアがいっぱいで楽しい。そのモリーもこれまでは、署内
の事務を切りもりする、ジェシイのよき理解者という感じだったのが、今回は捜
査(レイプ事件の方)に加わる点も面白い。連続殺人事件の方は、途中から誰が
犯人か読者には分かるようになり、ジェシイもそれを確信しつつ犯人との心理戦
へ。スペンサーシリーズでおなじみの州警察のヒーリーが出てくるのはいつも通
り。それに加えてリタ・フィオーレが出てくるのは楽しめた。ストーリーの展
開、登場人物の魅力、事件の解決と顛末、どれをとってもストーンシリーズで一
番楽しめた。
時代小説 : 聞書抄 (中公文庫)(本)
2008/4/30 recluseベスト66レビュアー
関西への移住以降の作品の中で、一応昭和を舞台とした作品をいくつか読んで見ましたが、ちょっとこの「起承転結というストーリイのない世界」にも疲れたようです。というわけで、もうひとつの彼の得意のジャンルでもある歴史小説(もっとも紀伊国狐....は時代小説ではありませんが)に眼を向けてみました。「間書妙」は立派な長編です。ここでは秀次と三成をめぐる因果応報と盲目を自発的に選択するという行為を通しての不思議な愛情表現が取り上げられています。もっとも後者が前面に出てくることはありません。語りは、不思議な因縁で邂逅することになった三成の娘、その乳母と盲目の法師との間で繰り広げられます。文体は現代文と古文が混合する形ですが、これには慣れが必要かもしれません。「三人法師」は短編ながら、3人の出家僧の告白という形式を通して、人間の不思議な運命の関わりとすべてのむなしさが描かれます。「悪は善の裏なのです」という真理が最後に提示されますが、と同時に出家すること(俗世での人間関係の断絶)の悲しさが三者三様の告白を通じて示されます。どの短編もたっぷり余韻を残す形で終わっているのは谷崎ならではでしょうか?
蒔絵の提げ重 : 蓼喰う虫 (新潮文庫)(本)
2008/4/30 recluseベスト66レビュアー
むずかしい作品でした。導入部から不思議な人間関係が展開されます。ここで繰り広げられる要と美佐子の夫婦関係は、徹頭徹尾、自己決定という態度の選択から、遠くはなれたものです。夫婦としての実体がすでに崩壊していることを両者共に認識しながらも、そしてその結末の近さを認識しながらも、現実は前には進むことはありません。「子供」の存在と近代の合理性の明快さを持ち込む従弟の登場にもかかわらず、最後までこの夫婦関係の破綻が事実へと発展することは明示的には示されていません。要のルイーズとの関係も、アクセサリー以上のインパクトはありません。それと対照されるのが、「美佐子の父」とお久との間のもうひとつの不思議な男女関係です。この男女関係は、親子ほどの年齢差にもかかわらず、前者のような”崩壊”への予感を与えることはありません。そこには要と美佐子の間のような「会話」は存在しません。その関係は細かいディテールの積み重ねによる、雰囲気の提示意外には描写はできません。このディテールとそこでの様々な小道具の使用はもはや現代の日本人にはついていけないものばかりです。人形芝居と人形浄瑠璃の観劇のシーンはその極致です。要と美佐子の父は、両者共に生粋の関西人ではないことが文中に示されており、どちらも作者の分身なのでしょう。というわけで、このディテールの描写はちょっとしつこいほどです。そして、最後の場面は、京都となります。ここでも結末は明示されることなく、この二つの分身は止揚(?)されぬまま、時間の経過による変化のみを暗示しながら、見事な余韻(207から208ページ)を漂わせて締めくくられます。
謎も、雰囲気も物語も濃密 : 藪枯らし純次(本)
2008/4/29 lemonerikaベスト10レビュアー
舞台は、中国山脈の中の鄙びた温泉。
村の人々に、祖母と母を、自殺に追い込まれたと信じる
男が帰ってきた。そこで、少女とともに、怪しげなバーを開店する。
男を嫌悪しながらも、バーに吸い寄せられる人々。
そして、次々起こる殺人事件。人が、町が崩れていく・・・。
男の監視を依頼された、語り手となる探偵の周辺にも・・。
退廃へ向かう濃密な雰囲気の中、物語はクライマックスへ。
男の狙いは?そして背後にある村の歴史との関係は・・・。
監視の依頼主の意図は・・・。
語り手や男、そして村自体の運命は・・・。
濃密な人間関係が残る鄙びた村が、人が、崩れていく様子が、
濃厚に描かれています。
しつこいまでの性と死の描写が、方言や村の描写とも相まって、
濃厚な雰囲気の中、物語は進みます。
最後まで読めない結末と雰囲気に呑まれ、一気に読んでしまいました。
読んだ後残る「後味の悪さ」も、物語の良さを表しているような
気がしました。
村の人々に、祖母と母を、自殺に追い込まれたと信じる
男が帰ってきた。そこで、少女とともに、怪しげなバーを開店する。
男を嫌悪しながらも、バーに吸い寄せられる人々。
そして、次々起こる殺人事件。人が、町が崩れていく・・・。
男の監視を依頼された、語り手となる探偵の周辺にも・・。
退廃へ向かう濃密な雰囲気の中、物語はクライマックスへ。
男の狙いは?そして背後にある村の歴史との関係は・・・。
監視の依頼主の意図は・・・。
語り手や男、そして村自体の運命は・・・。
濃密な人間関係が残る鄙びた村が、人が、崩れていく様子が、
濃厚に描かれています。
しつこいまでの性と死の描写が、方言や村の描写とも相まって、
濃厚な雰囲気の中、物語は進みます。
最後まで読めない結末と雰囲気に呑まれ、一気に読んでしまいました。
読んだ後残る「後味の悪さ」も、物語の良さを表しているような
気がしました。
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